水中竹馬の有用性と適用範囲の検討

Investigation of the effectiveness and fields of application of water stilts

中尾恵理(三重大学教育学部生涯教育課程スポーツ健康科学コース)
水野良美(三重大学教育学部生涯教育課程スポーツ健康科学コース)
重松良祐(三重大学教育学部保健体育講座)
   rshige@edu.mie-u.ac.jp

Eri NAKAO(Department of Kinesiology Science, Course for Continued Education, Faculty of Education, Mie University)
Yoshimi MIZUNO(Department of Kinesiology Science, Course for Continued Education, Faculty of Education, Mie University)
Ryosuke SHIGEMATSU(Department of Health and Physical Education, Training Course for School Teachers, Faculty of Education, Mie University)

 

  1. 緒言
  2. 研究課題1 ─ 水中竹馬が陸上竹馬の技能に及ぼす効果
  3. 研究課題2 ─ 盲学校の児童・生徒への適用
  4. まとめ
Abstract

 Wading and other types of physical activity in water for purposes other than swimming is very common activity for middle-age and elderly people at sports facilities. In order to explore the possibilities of supporting a wider range of users that includes children and people in an educational setting, the present research investigated the effects of practicing with water stilts on land-based stilt techniques, and the possibility of applying these techniques to young children and students of schools for the visually impaired. As a result, it appears that water stilts can be used as a training method for land-based stilts, and that by practicing with stilts in water, it may be possible to improve one's ability to safe walking with stilts on land. It was found that young children and students of schools for the visually impaired had a very enjoyable time with water stilts, even people whose balance is greatly affected by visual impairments. Moreover, even if one falls over using water stilts, there is little danger of injury, so they can be used not only by people with visual impairments, but also by people with low body strength, suggesting that it may be possible to use water stilts in an educational setting.

キーワード:水中運動、水中竹馬、視覚障害、竹馬、技能

1.緒言

 水泳以外の水中運動、たとえば水中ウォーキングやアクアビクスはスポーツ施設で中高齢者を対象に実践されていることが多い。子どもに適用されている例としては肥満児に対する減量プログラムとして水中運動がおこなわれていることもあるが3)、スポーツ施設で子どもが水中ウォーキングやアクアビクスダンスをおこなっている光景はあまりみられない。

 われわれは水中運動のヴァリエーションを広げるために水中竹馬という新しいプログラムに着目し、その動作を体系化した1)。ただし、この水中竹馬を新しい水中運動としてより多くの人に実践してもらうためにはいくつかの検討すべき課題がある。その例として、水中竹馬が通常(陸上)の竹馬技能に及ぼす効果を把握することや、子ども、特に陸上での竹馬試乗が困難と思われる視覚障害者への適用可能性を探ることが挙げられる。

 そこで本研究では、水中竹馬が陸上竹馬の技能向上に効果的なのか(研究課題1)、盲学校の児童・生徒も水中竹馬を安全に楽しむことができるのか(研究課題2)の2点から、スポーツ施設以外でも水中竹馬が取り入れられる可能性があるのかを検討した。水中竹馬が陸上竹馬の技能向上に役立つことが明らかになれば、より安全な竹馬の練習方法として活用することができ、教育現場で子ども向けに取り入れられる可能性が出てくると思われる。また、竹馬に乗るために必要となるバランス能力は視覚に依存するところが大きいとされている。そのため視覚障害者でも安全に楽しく乗ることができれば、バランス能力が低くても適用できる可能性が高まると考えた。

2.研究課題1 ─ 水中竹馬が陸上竹馬の技能に及ぼす効果

1)方法

A. 対象者

 水中竹馬群(pre-postの測定間に水中竹馬プログラムを実践する実験群)とコントロール群(測定間に休息を取る対照群)の2群比較という研究デザインを採用し、対象を大学生69名とした。そのうちの39名(男性16名、女性23名)を水中竹馬群、30名(男性12名、女性18名)をコントロール群へ無作為に配置した。水中竹馬群の年齢は20.4±1.3歳、コントロール群の年齢は20.3±1.6歳であり、有意差は認められなかった。

B. 測定方法

 Pre-postの測定は2回とも次のようにおこなった。陸上(コンクリート地のプールサイド)で竹馬に乗り、10 mを何秒で移動できるかを計測した。10 mに達しなかった者には、移動できた距離を計測した。次に10 m乗れた者に対して、検者の「右」「左」「前」「後」の指示通りに移動できるか否かについて、「あまり乗れない」「少し乗れる」「乗れる」の3段階で評価した。この評価基準は、前方のみ動くことができる場合を「あまり乗れない」、前方と前方以外の3方向のいずれかに動くことができた場合を「少し乗れる」、検者の指示通り4方向に動くことができた場合を「乗れる」とした。Pre、postの測定では最高5回まで実施できるものとした(pre-postの2回測定するため、最高で10回の試技となる)。10 m乗れた者はその時点で測定を終了した。水中と同じ条件にするために竹馬の足乗せ台の高さは水中と同じ45 cmに設定した。

 水中竹馬群に対しては図1に示してある水中竹馬プログラムを15分間提供した。コントロール群に対しては1回目の測定の後に15分間の休息を設け、その後に2回目の測定をおこなった。休息時間には水中竹馬プログラムを提供せず、また竹馬に触らないこと以外は特別な指示を与えなかった。

C. 統計処理

 竹馬の歩行速度に関して両群を比較した。Pre測定で10 m乗ることができ、かつ2回目の測定でも10 m乗ることができた者のみを対象に、pre測定よりもpost測定での歩行時間を短縮させた者の割合を比較した。さらに、pre測定よりpost測定の方が検者の指示通りに動くことができた者、つまり「あまり乗れない」「少し乗れる」「乗れる」のうち一つでも上位のカテゴリに改善した者の割合を比較した。

 最後に竹馬の歩行距離に関して検討した。Pre測定で10 m乗れなかった者のうち、post測定で60 cm以上歩行距離の伸びた者の割合を比較した。60 cm以上としたのは、実際に竹馬に乗った時の1歩が約30 cmであることと、2歩以上伸びた場合を「距離が伸びた」と考えたことによる。竹馬から落ちる(降りる)際に勢いで1歩出すという場合が多かったため、1歩もしくはそれ以下は移動距離が伸長したとみなさなかった。

 統計処理にはχ2検定を用い、有意水準は5% とした。

 

2)結果

A. 竹馬の歩行速度  水中群において、pre-post測定とも10 m乗れた者は39名中22名(56.4%)であった。Post測定で22名全員(100.0%)が歩行時間を短縮した。またコントロール群では30名中14名(46.7%)が両測定で10 mを移動でき、そのうちpost測定で時間を短縮したのは12名(85.7%)であった。χ2検定の結果、各群におけるpre測定時での10 m歩行可能者の割合に有意差はなく(56.4% vs. 46.7%、P = 0.47)、またpre-post間で時間を短縮した者の割合にも有意差は認められなかった(100.0% vs. 85.7%、P = 0.54)(図2)。

B. 4方向への移動

Pre-post測定ともに10 m移動できた者のうち、post測定の方が検者の指示通りに動けるようになった(上位カテゴリに改善した)のは、水中竹馬群で22名中13名(59.1%)、コントロール群で14名中2名(14.3%)であった。χ2検定の結果、指示通りに動けるようになった者の割合に有意な差(59.1% vs. 14.3%、P = 0.01)がみられ、水中竹馬群で動けるようになった者の割合が高くなった。

C. 竹馬の歩行距離

 水中竹馬群においてpre測定で10 m乗れなかったものの、post測定で歩行距離を60 cm以上伸ばした者は17名中14名(82.4%)であり、残りの3名(17.6%)にはpre-post間で移動距離に変化が見られなかった。コントロール群では16名中6名(37.5%)が60 cm以上距離を伸ばしていた。残りの10名(62.5%)にはpre-post間で移動距離に変化が見られなかった。χ2検定の結果、両群間に有意な差(82.4% vs. 37.5%、P = 0.01)がみられ、水中竹馬群で歩行距離を伸ばした者の割合が高かった。

 

3)考察

A. 竹馬の歩行速度

 両群間に歩行速度の変化に有意差がみられなかったことから、短時間の水中竹馬プログラムでは陸上竹馬の歩行速度に有意な効果をもたらさないことが分かった。水中では水の粘性抵抗によって負荷がかかり速い動作が困難になる2)。そのため、今回提供した水中竹馬プログラムには速い動きを含めておらず、このことが陸上竹馬の歩行速度に有意な影響を与えなかったものと考えられる。水の持つ粘性は安全確保には有用であるが、逆に素早い動作をおこなう技能を改善するには不適であることが示唆された。

B. 4方向への移動

 この項目では両群間に有意な差がみられ、水中竹馬群で指示通り動けるようになった者の割合が高い結果となった。このことから、水中竹馬をおこなうことが移動コントロール技能に好影響を与えることが明らかとなり、水中で練習することで自在に竹馬を操れるようになると考えられた。この群に提供した水中竹馬プログラムには4方向への動きが含まれており、水中竹馬群は4方向への動きを実際に経験したことが貢献したと考えられる。

C. 竹馬の歩行距離

 両群間で歩行距離の延長した者の割合に有意差がみられた。このことから、陸上竹馬の技能があまり高くない者にとって、水中竹馬プログラム実践によって陸上竹馬の歩行距離に好影響を及ぼすことが明らかとなった。陸上では竹馬に乗れない者でも水中では全員が乗れ、そのことが筋肉─神経系の連動性を高め、竹馬に乗るために必要なバランス感覚を養う可能性が示唆された。水中で得たバランス感覚を陸上でも活かすことができたために、post測定では歩行距離が伸びたと考えられる。コントロール群でも距離の伸びた者もいたが、これは竹馬や測定に対する慣れによるものと思われる。本研究ではコントロール群を設定し、両群を比較することで水中竹馬そのものの及ぼす効果を確認することができた。

 

4)研究課題1のまとめ

 以上の検討から、水中竹馬は陸上で速く歩くための練習にはならなかったものの、筋肉─神経系の連動性を高め、バランス感覚を向上させられる可能性が示唆された。また、バランス感覚が向上したことで陸上竹馬の技能も向上した。

 水中竹馬が陸上竹馬の技能向上に効果を及ぼしたことにより、竹馬の練習方法として活用できると思われる。すなわちスポーツ施設のプログラムとしてだけではなく、竹馬を遊びの道具として扱っている学校教育現場をはじめ、遊びや運動経験の少ない子どもたちにも提供できると思われる。

3. 研究課題2 ─ 盲学校の児童・生徒への適用

1)方法

A. 対象者

 三重県立盲学校の協力を得て、当該校の児童・生徒8名(小学4年男子、小学5年男子全盲、小学5年女子、中学1年女子弱視、中学1年女子全盲、高校1年男子、高校3年男子弱視、高校3年女子)に水中竹馬を実施した(視覚障害の程度が明確な児童・生徒についてのみ、その情報を性別の後ろに記した)。陸上竹馬の経験者は2名(小4男子、高3男子弱視)のみであった。

B.適用方法

 津トップスイミングクラブ(三重県津市桜橋町)の室内25 mプールにて、水中竹馬プログラムを提供した。1回のプログラムは約30分間とした。原則としてプログラム提供時には、対象者1名につき体育学やスポーツ健康科学を専攻している大学生を1名以上配置した。対象者の不安感を低減させるために、盲学校教諭に補助してもらうこともあった(図3)。

 プログラムは@竹馬の形状と特徴の解説、A竹馬に触れてみること、B竹馬試乗およびバランス保持、C竹馬歩行、で構成し、可能な限りこの順序で進めていくこととした。陸上竹馬の経験者や運動能力の優れた者に対しては、倒れていく際の浮遊感を味わえるようにしたり、歩行速度を高めて競技性を持たせたりした。

 プログラム終了後に児童・生徒、盲学校教諭、大学生の3者にそれぞれヒアリング調査した。

 

2)結果

A. 積極的に水中竹馬を実践した児童・生徒について

 8名の児童・生徒に竹馬を実施したところ、6名(小学4年男子、中学1年女子弱視、中学1年女子全盲、高校1年男子、高校3年男子弱視、高3年女子)の児童・生徒が積極的に水中竹馬を実践し、プログラム終了時まで乗っていた。これら6名の視覚障害の程度はさまざまであった。竹馬に乗るためにはバランス能力が必要とされるが、これには視覚が大きく依存するため対象者の水中竹馬の技能にもばらつきがみられた。しかし補助することで竹馬に乗り、歩けるようになった。

 プログラム終了時に、もう一度おこないたいと思うかと尋ねたところ、6名のうち1名が自分の言いたいことをうまく表現できないために回答を得られなかったが、その他の5名からは「楽しかった」「またおこないたい」という回答を得た。

 対象者ごとの事例を以下に示す。

@高校3年男子弱視の場合

 陸上竹馬の経験があるためか、一人で乗ることができた。プログラム終了時に「水泳は嫌いだが水中竹馬は楽しいので、また機会があったらおこないたい」と話した。

A小学4年男子の場合

 陸上竹馬の経験はあるものの、一人で乗ることはできなかった。しかし補助することで、前に歩くだけでなくジャンプしたり身体をひねったりとさまざまな動きを作り出して楽しんでいた。この児童に関しては、2回にわたって水中竹馬プログラムを提供する機会があった。1回目はさまざまな動きをつくりだして楽しんでいたが、2回目は一人で乗るという課題に取り組んだ。結局一人で乗ることはできなかったが、何度もプールを往復しているうちに自分で身体をコントロールし、バランスを取るということに慣れたため、あまり補助を必要とせずに歩けるようになった。この児童は実践しているなかで「竹馬に乗ること自体は怖くないが、急に転倒してしまい、自分の予期しないタイミングで水の中に落ちてしまうことが怖い」と話していた。

B中学1年女子弱視、中学1年女子全盲、高校1年男子、高校3年女子の場合

 いずれも陸上竹馬の経験がなく、竹馬そのものの形状を把握していない様子であった。竹馬というものを想像できず、未知のものに対する不安や恐怖心があるように見受けられた。

 水中竹馬を提供した時は怖いと拒んでいた者もいたが、竹馬の形状を説明して触らせると竹馬がどういうものかを想像することができ、不安や恐怖心が少し和らいだようであった。さらに、水の中なので転んでも痛くない、補助するから転倒する可能性は低いことを説明すると自ら竹馬に乗ろうとする姿勢が見られるようになった。当初は「怖い」と言っていた者も徐々に「怖くない」と答えるようになった。

 この4人はプログラム終了時になっても一人で立って乗れるようにはならなかったが、補助することで竹馬に乗って、楽しく歩くことができた。また、立って歩くよりも胸部まで沈んだ方がバランスを容易に保持できることから、しゃがんだ状態で一人で歩けた者もいた。

B. 水中竹馬を拒否した児童・生徒について 最初から拒否したり、途中で泳ぐほうが楽しいと答えたりした児童は8人中2人であった。

 対象者ごとの事例を以下に示す。

C小学5年男子全盲の場合

 最初は補助者が自己紹介をし、竹馬を知っているか尋ねるところからはじめた。男児は竹馬を知らないとのことであったので、まずは触ってみるか尋ねたが、恐怖心からか竹馬にすら触れなかった。この児童については水に顔をつけることも怖がっており、水中で何かをおこなうこと自体に恐怖心を抱いているようであった。

C小学5年女子の場合

 最初は補助者が自己紹介をし、竹馬を知っているか尋ねることからはじめた。女児も竹馬を知らなかったので竹馬に触れさせた。水や竹馬に対する恐怖心はあまりないようであった。10分ほど実際に乗っていたが、途中で泳ぐほうが楽しいと言ったためその時点で終了した。

C. 盲学校教諭、補助として参加した大学生の意見について

 盲学校教諭からは、「陸上竹馬よりも簡単で安全であり、補助もあまりいらない。目の不自由な人だけでなく、四肢の筋力の弱い人でも実施できる可能性がある」という意見を聴取することができた。大学生からは、児童・生徒が楽しんでいるように見受けられたという意見があった。また、「水中竹馬をとても気に入っていた」「水中竹馬は一人で歩く練習をしても陸上と異なり、転んでもけがをする心配がなくてよい」という意見も聞かれた。

 

3)考察

A. 視覚障害児も乗ることができたか

 完全に一人で乗ることのできた者は8名中1名のみであった。この対象者は軽度の弱視ということもあり、視覚情報にも頼りながら乗れたのではないかと思われる。他の5名のなかには、練習を重ねれば一人で乗れるようになると思われた。いずれも竹馬に慣れていくうちに徐々に自分でバランスを取ることができるようになったことを観察した。しかし予期せずに転倒するとパニックを起こしそうな予兆があったため、慎重にプログラムを提供していく必要があると思われる。

 また、視覚の障害の他に四肢の筋力の弱い児童もいた。竹馬をもちかけた当初は筋力が弱いため乗れないかもしれないと盲学校教諭は話していた。しかし実際には補助することで乗り、歩くことができた。補助力と浮力による体重の軽減により、対象者の身体的負担を軽減することができたと考えられる。このことから四肢の筋力の弱い人にも実施できる可能性も示唆された。

B. 楽しんでいたか

 8名のうち6名は楽しんでいたと思われる。6名の中には自分の考えをうまく表現できない生徒もおり、直接聞き取ることはできなかったが、様子を見る限り、そして教諭の意見からも楽しく取り組んでいると判断できた。

 本研究では厳密なプログラムを作成したのではなく、参加者が自由に水中竹馬に乗るようにした。その結果、さまざまな動きを作り出したり、一人で歩くことに挑戦したりするなど子ども自らの工夫でそれぞれの楽しみ方を見つけていた。このことから、水中ウォーキングやアクアビクスにはあまり見られない、'楽しむ'という点に重点を置いた'遊び'としての特長を有していると考えられ、水中竹馬が子どもにとっても魅力的な水中運動の一つになる可能性が示唆された。

C. 安全性

 当初の予想に反し、補助することでほとんど転倒せずに乗れていた。一方で、予想以上に対象者は顔が水につくことを怖がっているようであった。バランスを崩すと視覚障害のために水中に落ちるタイミングが分からないことが不安感をもたらしていると思われた。水深の深いプールでは頭まで水中に沈んでしまうことも考えられるため、転倒しそうになってもすぐに支えられるように補助者は留意しなければならない。そのため、仮に一人で乗れる場合でも補助した方が安全性を高められると思われる。

 

4)研究課題2のまとめ

 視覚障害や四肢筋力低下の者にも水中竹馬を適用できる可能性が示唆された。しかし今回は参加者が盲学校の児童・生徒ということで障害の範囲もある程度限られており、一概に水中竹馬がすべての障害者を対象にできるとは言えないため、今後さまざまな障害者に適用していくなかで、普及できる対象者層を特定していく必要があると思われる。

 

4. まとめ

 研究課題1および2より、水中竹馬がスポーツ施設以外で、子どもにも取り入れられる可能性が示唆された。その内容は以下の3つである。

  1. 陸上竹馬の練習方法として用いられる可能性。水中竹馬は陸上竹馬の歩行速度には影響しないが、歩行距離を伸ばしたり、自分の思い通りの方向へ移動したりするための練習方法として活用できることが明らかとなった。さらに、水中でおこなった方が傷害につながりにくいことから、安全性にも優れているといえる。
  2. 遊びとして取り入れられる可能性。水中竹馬は子どもも十分に楽しめるものであった。学校などの教育現場に取り入れたり、スポーツ施設で子どもを対象としておこなったりできるのではないかと思われる。子ども向けの水中運動の種類が少ないなかで、子ども向けの新しい水中運動として確立することが示唆された。
  3. 視覚のハンディキャップを有している者も実践できる可能性。陸上竹馬に挑戦できない者にとっても、水中では浮力による身体的負担や恐怖心からくる精神的負担を軽減することができる。水中竹馬は一人で乗ることができなくても補助することで多くの人が乗れるようになる。

 つまり、水中竹馬は子どもや視覚に障害を有する者を含めた幅広い層を対象とした運動プログラムとして可能性が示された。

 

謝辞

 本研究にご協力くださった三重県立盲学校と三重大学学生の皆さまに心から感謝申しあげます。また、室内プールを貸してくださった津トップスイミングにも厚く御礼申しあげます。

 

文献

  1. 水野良美, 中尾恵理, 重松良祐(2005)新しい運動プログラムとしての水中竹馬の試案. http://gym.taiiku.tsukuba.ac.jp/taisou/journal/02/index.htm
  2. 武藤芳照. (1982)水泳の医学, pp.9-16, ブックハウス・エイチディ
  3. Nichols, J.F., Bigelow, D.M., Canine, K.M. (1989) Short-term weight loss and exercise training effects on glucose-induced thermogenesis in obese adolescent males during hypocaloric feeding. International Journal of Obesity, 13: 683-690