健康増進施設としての公園利用に関する研究

Studies on the Public park use as health promotion facilities 

金子嘉徳(女子栄養大学),春山文子(実践女子大学),

鞠子佳香・長谷川千里(女子栄養大学),荒木達雄(日本体育大学)

Yoshinori KANEKO(Kagawa Nutrition University), Fumiko HARUYAMA(Jissen Women`s University)Yoshika MARIKO・Chisato HASEGAWA(Kagawa Nutrition University),Tatsuo ARAKI(Nippon Sport Science University)
abstract

 In Healthy Japan 21, it determined each target point from the view point of prevention of life-related disease. However, these points are made only for the targeted points and are not for a method or an example for how to stay healthy. In the interim report, the exercise point is less than the standard and can be said that it has not reached the target point. In addition, the obesity tendency has increased yearly which has triggered off the life-related disease. Furthermore, the decline in the physical strength among the children is a problem.

 It is important that the environment to pursue the exercise is quite related. There are public and private facilities for doing exercises. However these facilities are exclusive, expansive and not open all the time for the reasons of safety. For these reasons, it is difficult for and individual to use the facilities without constraint. An open facility, near ones home such as a public park would be perfect place for doing exercise. In Southeast Asia, there are many parks which are footholds of making of health. A survey was conducted to the Thai people who use the park to do their exercise. The park played an important role for routine exercise and communication with friends. In Japan, by maintaining the neighborhood public parks to make an environment suitable for exercising and a place of communication among the local people, the public parks will become major place in our lives.

 

Key words:健康日本21、健康づくり、運動施設、公園、身体活動 

Key words: Healthy Japan 21, health promotion, public park, exercise

1.序論

 今日、日本は世界でも類を見ないスピードで超高齢化社会を迎えたが、その長い生涯における健康の持続増進がQOLの向上や医療費の節減などからみても緊急の課題となっている。これに対応して2000(平成12)年に厚生省から出された「健康日本21」では、生活習慣病を減らすための健康づくり対策を「栄養」「運動」「休養」の他に喫煙、飲酒、歯科保健という6項目の生活習慣と3大生活習慣病という9領域に分け、各々について目標とすべき指針を打ち出した5)。しかしその具体的・実践的方法についてはほとんど示されていないため、国民個人から見ると、目標は理解できても具体的な実践方法が想定しにくい状況にある。つまり、個人レベルでも自治体レベルでも、目標を達成するための具体的な実践方法を模索している段階にあり、2004(平成16)年「健康日本21」の中間報告でも十分な成果が上がっているとはいえない状況にある3)

 運動には継続性、つまり習慣化が重要であるが、そのためには地域住民が地域で日常的に健康づくりができるような運動環境の整備も重要である。日常的な運動場所としては学校の開放やスポーツ施設の利用がまず考えられるが、学校は近年事故や事件が多発していることから市民に対する日常的な一般開放は難しい。また、スポーツ施設は、運動環境は整えられているが、会員制や予約制のため利便性に欠ける。そこで注目されるのが地域の公園である。

 従来、日本の住宅地域の公園には利用者の中心に子供を想定した公園が多く、子供用の遊具としてすべり台、砂場、ブランコ等が設置されている場合が多かった。しかし、近年少子化の影響を受けて公園利用者に占める子供の割合が減少してきている。そのため、このような公園の中には子供用の遊具の代わりに、腹筋、背筋等を鍛える健康づくり運動器具や、ウォーキングコースを設置した公園へ改修する例がみられるようになってきた。つまり、これまでの公園は、子供の遊び場、住民の憩いの場としての利用が主目的であったが、最近では積極的な健康づくりの場へと変容しつつある1),4),10)。現在の健康づくりのための運動施設としては、公共または民間の運動施設の利用が中心であるが、このような施設は管理上の理由等により個人がいつでも自由に利用できるような環境にはなっていない。このような現状において、運動器具を設置するなど健康づくりのための利用に配慮した公園が増えることは、個人が最も手軽に運動を実施できる環境の整備ととらえることができるであろう。

2.目的

 本研究では、すでに公園での運動利用の盛んなアジアの国に注目し、タイの首都バンコクのルンピニ公園と北部地方都市チェンマイにおける運動実施者の実態を調査することによって、今後の日本の公園の運動施設化への可能性を考察することを目的とした。

3.調査方法

 タイの首都バンコクのルンピニ公園と北部地方都市チェンマイの公園で、朝・夕に運動を行っていた人々を対象に、28項目からなる無記名のアンケート調査票を筆者ならびに現地調査者が被調査者に配布しその場で記入してもらい回収した(集合調査法)(資料1:日本語PDF形式108KB,資料2:タイ語PDF形式120KB)。

 調査時期は、ルンピニ公園については2004(平成16)年5月に、チェンマイの公園については2005(平成17)年3月に実施した。

 調査地のルンピニ(「Lumpini」)公園はタイの首都バンコクで最も大きく有名な緑地の多い公園である8)。一方のチェンマイ「ChiangMai」はタイの北部に位置する地方都市で、市内にあるブアックハット公園(Buak Hat Public Park )やフィットネス公園(Fitness Park)等9)で調査を行った。

 調査対象者は各々の公園で体操をしていた男女で、ルンピニ公園53名(男性16名、女性37名)、チェンマイの公園101名(男性45、女性56)である。

 調査対象者の男女比と男女別年齢構成を、図1と図2に示した。ルンピニは、男女比が約3:7の割合で、男性は60歳代と70歳代が9割、女性は40歳代と50歳代がそれぞれ3割、60歳代が2割、70歳代が1割である。チェンマイは、男女比約4.5:5.5の割合で、年齢構成は男女とも10歳代から60歳代にばらついている。

 調査対象者の男女別職業構成を図3に示した。ルンピニの男性は、自営業、自由業、公務員が多く、70歳代になると無職(退職者)が多くなる。女性は自営業と自由業が多く、40歳代から70歳代は専業主婦が多い。

 チェンマイは、男女とも10歳代、20歳代のほとんどが学生で全体の約35%をしめている。他の年代では、男女とも自営業、自由業、公務員が多く、40歳代から60歳代の女性では専業主婦の割合が多い。

 分析方法はアンケートソフト「秀吉」により、単純、クロス集計後χ2検定した。

4.結果及び考察

(1)公園で運動する目的

 「公園で運動する目的」(複数回答)の結果を図4に示す。

 ルンピニ、チェンマイの男女とも8割以上、特にルンピニの女性はほぼ全員が「健康のため」と回答した。次に多かったのが、「仲間との会話(コミュニケーション)」で、ルンピニの男性7名(43.8%)、ルンピニの女性10名(27.0%)とチェンマイの男性12名(26.7%)であった。

また、「減量(ダイエット)」は予想したよりも少なく、全体に1割から2割程度であった。他に比べチェンマイの女性は14名(25.0%)とやや多いが、これはやはり10代から30代の若い女性が多いためと推察される。

(2)この公園で運動するようになったきっかけ

 「この公園で運動するようになったきっかけ」(複数回答)の結果を図5に示す。

 グループに関係なく回答が多かったのは「家族・友人に誘われて」で、3割から4割であった。ルンピニの女性には「公園で運動する様子を見て」が16名(51.6%)と多い。

 チェンマイの男女で最も回答が多かったのは「その他」の約5.5割で、その内訳はほとんどが「自分で」で、他者から勧められてではなく自主的に始めた人が多いと推察される。

(3)この公園で運動を始めてからの年数

 「この公園で運動を始めてからの年数」の結果を図6に示す。

 「年数」は公園と性別と有意差(p<0.01)が見られ、ルンピニでは、長期間続けている人の割合が多く、特に男性では「16年〜20年」が6名(37.5%)、「21年以上」が5名(31.3%)で、これらを合わせると7割が「16年以上」である。男性の年齢構成は60代以上が多いことから、若い頃から運動を継続している人が多いことが推察される。女性は「6年〜10年」11名(29.7%)、「1年〜5年」9名(24.3%)が多いが、「11年以上」の長期続けている者も15名(40.5%)と4割を占めている。

 それに対して、チェンマイは男女とも「1年〜5年」が多く、男性24名(53.3%)、女性33名(58.9%)で、「1年未満」「1年〜5年」を合わせると男性は7割、女性は8割以上が「5年以下」に含まれる。年齢構成がルンピニに比べ若いこと、学生が多いことによるものと推察される。

(4)この公園で運動をする前の運動習慣

 「この公園で運動をする前の継続的な運動習慣の有無」の結果を図7に示す。

 「継続的な運動習慣の有無」は公園と性別ともに有意差(p<0.05)がみられ、ルンピニでは男女とも「行っていなかった」の割合の方が高い。

 チェンマイでは、「行っていた」の割合がやや多く、男性は約6割、女性も半数以上であった。

(5)家から公園までの来園手段と所要時間

 「この公園への来園手段」と「家から公園までの所要時間」を図8と図9に示す。

 「来園手段」「所要時間」とも公園と性別との間で有意差(p<0.01)がみられる。

 ルンピニでは、男女とも「車」の利用者が6割と多く、ついで女性は「バス」が3割を占めた。「所要時間」は全体では「19分」以内より「20分以上」の方が多く、男性では「30分以上」かかる者が5割近い。ルンピニ公園が大都市部のオアシス的な大きな公園であることから、運動のためにやや遠くからでもこの公園に集まってくる人たちが多いことが推察される。

 それに対してチェンマイは、「徒歩」「自転車」「バイク」のような「車」以外の回答が多かった。所要時間も男女とも「0〜9分」が2割、「10分〜19分」が7割で、利用者にとっては身近な地域の公園であることが推察される。

(6)1週間の公園での運動回数

 「この公園に1週間に何回運動をしに来るか」を図10に示す。

 

 「運動回数」は公園と性別ともに有意差(p<0.01)がみられ、ルンピニでは、男性の9割、女性の8割が「毎日」と回答し、毎日の運動習慣となっていることが推察される。

 チェンマイでは、男女とも25%が「毎日」が男女とも25%程度であるが、「週5〜6回」「週3〜4回」の割合は多く、「週1〜2回」以下は1割程度であった。ルンピニより頻度は少ないが、「学生」が多いので「この公園」以外の場所で運動を行っていることも考えられ、そのことは図22「この公園以外の公園でも運動を行っているか」で「行っている」割合がルンピニに比べ多いことからも推察される。

(7)公園の来園時間と滞在時間

 「この公園に何時ごろ来て、何時ごろ帰るか」については、ルンピニは図11-1と図11-2に示し、チェンマイは図12に示した。

 

 

 

 ルンピニでは、「来園する時間」は、男女とも「4時〜5時前」「5時〜6時前」という早い時間帯が非常に多い。「滞在時間」も「2時間」以上が男性75%、女性90%と非常に長い。

 チェンマイでは、「公園利用の時間帯」が早朝と夕方に分かれ、早朝よりも夕方運動する者が多い。在園時間は「2時間」以下であった。

(8)公園で運動をしている時間

 「この公園にいる時間のうちの運動時間」を図13に示す。

   

 「運動時間」は公園と性別ともに有意差(p<0.05)がみられ、ルンピニの男性は「45分くらい」4割、「1時間30分以上」3割であった。女性は「1時間くらい」5割、「1時間30分以上」3割であった。図11-2で示した在園時間に比較すると、公園にいる間運動しているわけではなく、公園に来る理由は他にもあることが推察される。図4「公園で運動する目的」で「健康のため」に次いで「仲間との会話」が多く挙げられていること、図15「一緒に運動している相手」で「友人」「同好会」が多く挙げられていること、図27-1「この公園の魅力(ルンピニ公園)」で「運動する仲間が多い」が一番多いことなどから、運動以外の仲間との交流にも多くの時間を使っていることが推察され、このことが公園までの所要時間がかかっても、ほぼ毎日早朝から運動を続ける原動力の一つとなっていると考える。

 チェンマイは、「1時間くらい」が男女とも65%を占め、「在園時間」とにルンピニほど差は見られなかった。運動者にとって公園が比較的近いこと、運動時間帯が夕方に多いこと、学生が多いことなどから、公園に体を動かすことを主な目的に来ていることが推察される。

(9)公園での運動人数

 「公園で一緒に運動する人数」を図14に示す。

 「人数」は公園と性別ともに有意差(p<0.01)がみられる。

 ルンピニでは、特に女性に「11人以上」という団体制が顕著であるのに対し、チェンマイでは特に女性では「1人」が50%と多く個人参加者が多い。

(10)この公園で実施している運動の種類

 「この公園で実施している運動」(複数回答)を図15に示す。

 

 ルンピニの男性は、「太極拳」7名(43.8%)、「気功」と「ウォーキング」がそれぞれ5名(31.3%)、「ダンス」3名(18.8%)、「エアロビクス」「ジョギング」「ウエイトトレーニング」「ストレッチ」の順であった。ルンピニの女性は、「ウォーキング」17名(47.2%)、「エアロビクス」15名(41.7%)、「太極拳」13名(36.1%)、「ダンス」6名(16.7%)、「ストレッチ」「ウエイトトレーニング」「体操」「ジョギング」「ヨガ」の順であった。

 チェンマイの男性は、「ジョギング」28名(62.2%)、「ウォーキング」17名(37.8%)、「エアロビクス」8名(17.8%)、「体操」「ヨガ」「ウエイトトレーニング」「ダンス」「ストレッチ」の順であった。女性は、「ジョギング」29名(52.7%)、「ウォーキング」20名(36.4%)、「エアロビクス」15名(27.3%)、「太極拳」「ウエイトトレーニング」「気功」「ダンス」「ヨガ」「体操」の順であった。

 「ウォーキング」は、性別、公園別を問わず1番目か2番目に多い運動である。「エアロビクス」はどちらの公園でも女性に多い。ルンピニの男女は「太極拳」「エアロビクス」「気功」「ダンス」のようなグループで行う運動が多く、チェンマイの男女は「ジョギング」や「ウォーキング」のような個人または少人数で行う運動が多い。

(11)運動を誰に教えてもらったか

 「運動を誰に教えてもらったか」を図16に示す。

 ルンピニの男性は、「運動の先生」7名(43.8%)、「家族・友人・知人」6名(37.5%)で、女性は「運動の先生」が29名(90.6%)であった。

 チェンマイの男性は、「その他」20名(47.6%)、「運動の先生」13名(31.0%)、「家族・友人・知人」9名(21.4%)、女性は「その他」30名(54.5%)、「運動の先生」16名(29.1%)で、「その他」は主に「自分で」であった。

ルンピニの男女は「太極拳」「気功」「ダンス」「エアロビクス」のような多人数で行う運動を「運動の先生」を中心に行っていることが推察される。それに対して、チェンマイの男女は「ジョギング」と「ウォーキング」が中心であるので、自己流で行っていることが推察される。

(12)用具の利用

 「運動をする時の用具利用」を図17に示す。

 全体に「用具を使わない」の割合が多く、屋外で行う運動であることや長時間公園で過ごすことを考えると用具を使わず身軽に行えるようなものが多いと推察される。ルンピニ女性のみ4割が用具を利用していた。

(13)音楽の利用

 「運動をする時の音楽利用」を図18に示す。

 「音楽利用」は公園と性別ともに有意差(p<0.01)がみられ、ルンピニは「音楽を利用する」割合が高く、男性6割、女性8割で、チェンマイは「音楽を利用しない」の割合が高く、男性7割以上、女性6割であった。チェンマイでは「ジョギング」「ウォーキング」が多いため音楽の利用が少ないと推察される。また男女を比べると、「エアロビクス」の割合の高い女性に「音楽」の利用が多かった。

(14)公園での運動を家でも行っているか

 「公園で行っている運動を家でも行っているか」を図19に示す。

 公園と性別ともに有意差はなく、ルンピニの男女、チェンマイの男女とも、「家で行っていない」が7割から8割を占めた。ルンピニ、チェンマイとも公園での日常的運動習慣があるので、家でも運動する人の割合が少ないものと推察される。

(15)この公園以外の公園でも運動をおこなっているか

 「この公園以外の公園でも運動を行っているか」を図20に示す。

 公園と性別ともに有意差(p<0.05)がみられ、ルンピニ男女とチェンマイ女性は、「他の公園では行っていない」の割合が多い。

 チェンマイ男性は、「他の公園でも行っている」が5割以上おり、図10「この公園での一週間の運動回数」では最も頻度の少なかったグループであるが、他の公園での運動を合わせると1週間の運動回数は他のグループと同じように多いことが推察される。

(16)今後やってみたい運動

 「今後やってみたい運動」(複数回答)を「現在実施している運動」(複数回答)と合わせて図21-1から図21-4に示す。

 

 ルンピニの男性(図21-1)の「今後やってみたい運動」は、「ウォーキング」3名(42.9%)、「ジョギング」2名(28.6%)などであった。

 ルンピニの女性(図21-2)は、「ウォーキング」11名(40.7%)、「太極拳」8名(29.6%)、「エアロビクス」「ダンス」それぞれ7名(25.9%)、などであった。ルンピニの男女とも「ウォーキング」の人気が高い。

 チェンマイの男性(図21-3)の「今後やってみたい運動」は、「気功」20名(44.4%)、「ヨガ」12名(26.7%)、「太極拳」7名(15.6%)などで、チェンマイ女性(図21-4)は、「ヨガ」22名(40.0%)、「気功」20名(36.4%)、「太極拳」16名(29.1%)、「エアロビクス」15名(27.3%)などであった。男女とも「現在実施している運動」が「ジョギング」「ウォーキング」が多いので「今後やってみたい運動」はそれ以外の運動が多かった。

(17)公園で運動を続けてきてよかったこと

 「公園で運動を続けてきてよかったこと」(複数回答)を図22-1と図22-2に示す。

 ルンピニ男性は、「病気をしにくくなった」11名(73.3%)、「腰痛・肩こりが解消した」10名(66.7%)、「姿勢がよくなった」「食事がおいしい」「毎日が生き生きする」それぞれ9名(60.0%)、「友達が増えた」7名(46.7%)、「肥満が解消した」「肌がきれいになった」それぞれ6名(40.0%)であった。

 ルンピニ女性は、「病気をしにくくなった」28名(80.0%)、「毎日が生き生きする」27名(77.1%)、「友達が増えた」24名(68.6%)、「姿勢がよくなった」20名(57.1%)、「腰痛・肩こりが解消した」19名(54.3%)、「食事がおいしい」14名(40.0%)、「肌がきれいになった」10名(28.6%)、「肥満が解消した」8名(22.9%)であった。

 チェンマイ男性は、「病気をしにくくなった」30名(66.7%)、「腰痛・肩こりが解消した」16名(35.6%)、「姿勢がよくなった」「友達が増えた」それぞれ15名(33.3%)、「毎日が生き生きする」9名(20.0%)、「肥満が解消した」6名(13.3%)、「食事がおいしい」5名(11.1%)であった。

 チェンマイ女性は、「病気をしにくくなった」48名(87.3%)、「腰痛・肩こりが解消した」26名(47.3%)、「姿勢がよくなった」23名(41.8%)、「肥満が解消した」13名(23.6%)、「食事がおいしい」7名(12.7%)、「毎日が生き生きする」6名(10.9%)、「肌がきれいになった」5名(9.1%)であった。

 ルンピニ男女とも「病気をしにくくなった」が最も多く、特にルンピニ男性では「腰痛・肩こりが解消した」「姿勢がよくなった」「食事がおいしい」など体調に関するものが多い。ルンピニ女性も同様だが、7割が「友達が増えた」と回答し、仲間とのコミュニケーションが大切な要素であることが推察される。また「毎日が生き生きする」も多く、公園での運動が毎日の健康づくりに大きな役割を果たしている事が推察される。

 同様にチェンマイでも男女とも「病気をしにくくなった」が多く、次いで「腰痛・肩こりが解消した」「姿勢がよくなった」の順で多く、毎日の健康づくりに大きな役割を果たしている事が推察される。

(18)この公園の魅力

 「この公園の魅力」(複数回答)を図23-1と図23-2に示す。

 ルンピニ男性は「運動する仲間が多い」9名(60.0%)、「自然が多い」7名(46.7%)、女性は「運動する仲間が多い」24名(66.7%)、「自宅から近い」21名(58.3%)、「自然が多い」20名(55.6%)などであった。

 チェンマイ男性は「自宅から近い」20名(45.5%)、「自然が多い」17名(38.6%)、「運動する仲間が多い」11名(25.0%)などで、女性は「自宅から近い」32名(60.4%)、「自然が多い」29名(54.7%)などであった。

 ルンピニ、チェンマイとも、「自宅から近い」「自然が多い」ことが公園の大きな魅力になっている。特に多人数のグループで運動する割合の高いルンピニ公園では、「運動する仲間が多い」が男女とも最も多かった。

(19)生活上の重要度

 「この公園での運動の生活の上における重要度」を図24に示す。

 「とても大切である」「大切である」を合わせると、最も少ないチェンマイの男性でも75%、他の3グループでは100%近い。どちらの公園においても、公園での運動が日常生活において大きな位置を占めている。

5.まとめ

 東南アジアにおいては、公園が健康づくりの拠点になっている先進的事例が多い。そこで公園の運動利用が盛んなタイの公園で実状を把握するため今回のアンケート調査を行ったところ、日常的な運動習慣と仲間とのコミュニケーションに重要な役割を果たしていることが明らかになった。公園における運動が習慣化することによって、健康状態の改善が見られている様子がうかがわれる。特にチェンマイ市内の公園では、運動の内容が日本の公園でよく見られるような「ウォーキング」や「ジョギング」中心という傾向がみられ、より身近なモデルとなりうると考える。

 日本においても、諸外国を参考に近隣の公園を整備することによって運動しやすい環境づくりができて、公園が地域住民の交流の場としても重要な機能を果たしうるとみられる。中高齢者の運動実施を念頭に置いた公園の整備や設備の充実、安全面の配慮、運動実施者に対するフォローアップなどを図ることによって、公園が地域住民の健康づくりの拠点となりうる可能性が示唆される。

 現在わが国では、公園にどのような健康づくり運動器具を配置すべきかについては試行の段階にあり、利用方法についての検討はあまりなされていないのが現状である。少子高齢化時代の身近な健康づくり施設として、今後健康づくり運動器具のある公園への要望はさらに高くなるものと思われる。健康づくり運動器具を設置した公園の利用については、すでにいろいろな用具、器具を利用した健康づくりを長年の積み重ねてきた体操領域が、他の運動領域よりも多くのアイデアを出すことが可能であると考えられる。また、これら公園の効果的な利用方法の講習会や利用者へのフォローアップなどが可能になれば、公園は地域における新しい健康づくり活動の拠点となりうると推察される。

 65歳以上が総人口の20.5%(平成18年7月現在)7)を超える現代において、運動を生活習慣化とすることは医療費削減や高齢者の「心の健康」「人とのコミュニケーション」や「生きがい」にもつながるので、運動の普及はきわめて重要である2),6),11)。 今後、自分自身の健康は自分でつくり、社会全体でそれを支えるという取り組みが、今後さらに重要になってくると考える。公園の運動利用は、高齢化社会における生涯の運動習慣獲得への有効な一方策になりうるものと考える。安全面などでまだ問題点はあるが、今後地域住民の健康づくりの場として有効に活用することが期待される。

 謝辞

 タイの公園での調査にご協力を頂きました現地日本語研修センター講師池田静子様、並びにアンケート調査にご協力を頂きました多くの皆様に深く感謝申し上げます。

6.文献

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  3. 健康日本21中間評価作業チーム(2004),「健康日本21」中間評価報告書(案). pp.14-15, 厚生労働省
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  5. 厚生労働省(2006),21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」の推進について(平成12年3月31日付健医発第612号厚生省保健医療局長通知). http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/s0.html (accessed Nov. 27)
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  10. 竹島伸生,田中喜代次,小林章雄(1997),高齢者の健康づくり-運動処方の実際と課題-. pp.188-191, メディカルレビュー社
  11. 堤俊彦(2006), 効果的な介護予防のための行動科学的な視点. 現代のエスプリ, No.463, pp.147-161, 至文堂